感覚鈍麻があることから、学習に困難を感じている子どもは多くいる?
ノートが上手く取れない、計算や漢字の書き取りが不得手、授業に集中できない…など、子どもの学習に関連する困りごとは、「限局性学習症(学習障害・LD)」が原因なのではないかと考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、限局性学習症がなくても、感覚の特性や、そのほかの発達障害の特性から学習に困難を感じている子どもも多くいると考えられています。特定の領域の学習ができない限局性学習症とは異なり、環境に左右される原因によって学習困難が起こることがあります。
このコラムでは「感覚鈍麻がある子どもの学習の悩み」について、原因や解決方などを解説します。
感覚鈍麻があることで起こる学習の悩み
感覚が過敏なこととは反対に、感覚刺激に気づきにくい、いわゆる感覚鈍麻な特性をもつ子どももがいます。たとえば、暑い日なのに厚手のはおりものを着たままでぬぎ着して調節できない、熱いものに触れているのに気づかないでやけどする、あざができても気づかない、といったことがあります。
感覚を求めて体を動かしてしまう
感覚を求める傾向が強いために、授業中に体を揺らしたり動かしたり、じっとしていられない、離席が多いなど、集中して学習に取り組めない状態となることがあります(感覚を求める傾向を感覚探求といいます)。
解決策:たとえば、かめるもの・握れるものといった道具を使ったり、人工芝のついた足置きを使ったり、椅子をバランスボールにしたり、といった感覚を取り込める環境をつくることも解決策となります。それでも難しい場合は、席を教室の後ろのほうにして、動くことを許容する環境をつくってあげても良いでしょう。
・授業前に身体を動かしてから始める
・小テストの答えを席の後ろや廊下に貼っておき、移動して答え合わせのプリントを見られるようにする
など、時間を決めて動ける機会を作るなども有効な場合があります。
暑いか寒いかの判断が難しかったり、痛みに対して感覚が鈍かったりする
暑いのに長袖を着て熱中症になる、寒いのに半袖を着て体調不良を起こすなど、服装を適切に調節できずに体調を崩すことがあります。また、発熱しているのに元気に走り回ったり、怪我をしているのに気づかず、平気な様子で過ごしてることがあります。
解決策: 「熱いから素手で持たないでね」「寒いから上着を着てね」など、感覚のフィードバックをしましょう。特に危ないものに対しては視覚的に危険だと示すことが効果的です(「さわらない」の看板の掲示など)。
音に対する反応性が低い
人からの声かけに気づきにくい子どももいます。先生が話していることに気づかず連絡事項が聞き取れないために忘れ物が多くなったり、お友達の声かけに気づかずに、トラブルになったりするケースがあります。
解決策:たとえば、肩を叩く、目の前に立って目を合わせるなど、注意を向けてから話しかけることで気づいてもらいやすくなります。また、口頭だけではなく、紙に書くなど視覚情報も合わせて伝えるとより伝わりやすいです。
文字や絵をうまく書けない
鉛筆から指先に伝わってくる感覚をうまく処理できないなどが原因で、文字や絵などがうまく書けないことがあります。
解決策:文字を書くときに、鉛筆が紙に触れている感覚が分かりやすくなるように表面がザラザラした下敷きや紙やすりなどを紙の下に敷くという方法があります。鉛筆がうまく持てない場合には、握りやすくするための補助具を使うことも検討してみましょう。
机や棚によく身体をぶつける
自分の体の大きさや、感覚を捉えにくいために、歩いているときに机や棚などに体をぶつけやすい場合があります。
解決策:体のイメージがうまく捉えられない場合、たとえば狭い隙間やトンネルをくぐるような、体の大きさを意識できるような遊びにチャレンジすることで、発達を促すことができます。また、身体をぶつけやすいことに気づいてもらうことも重要です。身体の状態や周囲のものに意識を向けてもらうために、ぶつかりやすい状況などについて話し合ってみることも一つの方法です。